高校に通わず独学で東大教授になった柳川範之さんの「東大教授が教える独学勉強法」は、従来の勉強法とは大きく違う新しい学びの方法を提案しています。
- テーマ設定
- 資料収集
- 本の読み方
- 情報の整理・分析
- 成果のアウトプット
まで、著者自身の体験に基づいた実践的な独学メソッドが詳細に解説されています。
これからの時代に求められる「答えのない問い」に自分なりの答えを見つけるための勉強法は、学生だけでなく社会人にも大いに役立つ内容となっています。
著者・柳川範之さんの経歴と本書の概要
高校に行かず独学で東大教授になった異色の経歴
柳川範之さんは1963年生まれ、現在は東京大学大学院経済学研究科・経済学部教授として活躍されています。彼の経歴は一般的な学者とは大きく異なります。中学卒業後、父親の海外転勤に伴いブラジルへ渡り、そこで高校に通うことなく独学生活を送りました。
当時のブラジルには日本人学校の高校がなかったため、日本から参考書や問題集を取り寄せ、自分で勉強する道を選んだのです。その後、大学入学資格検定(大検)を受け、慶応義塾大学経済学部通信教育課程に入学。大学時代はシンガポールで通信教育を受けながら独学生活を続けました。
大学卒業後は東京大学大学院経済学研究科博士課程を修了し、経済学博士(東京大学)の学位を取得。現在は契約理論や金融関連の研究を行う傍ら、自身の体験をもとに若い人たちに学問の面白さを伝える活動も精力的に行っています。
「独学」という学びの方法を伝える意図
柳川さんが本書で「独学」という学び方を伝えようとした背景には、現代社会における勉強の意義の変化があります。インターネットやモバイル機器の普及により、知識や情報を単に覚えることの重要性は低下し、代わりに情報を選別し、自分の頭で考え、判断する力が求められるようになりました。
柳川さんは、このような時代に必要な学びの姿勢として「独学」を提案しています。独学とは単に一人で勉強することではなく、自分で目標を見つけ、問いを立て、集めた情報や知識を自分の中に落とし込みながら考えを深め、それを現実に応用していくプロセス全体を指します。
本書は、柳川さんの長年にわたる独学経験に基づき、勉強の全工程について具体的なやり方を体系的にまとめたものです。高校に行かなかった特殊な経験から得た知見が、これからの時代に必要な学び方として再構築されているのです。
新しい「勉強」が必要とされる時代
なぜ人は勉強するのか?
そもそも私たちはなぜ勉強するのでしょうか。柳川さんによれば、勉強の本質的な目的は「生きていくときに必要な知恵を身につけるため」です。人生では様々な場面で選択を迫られますが、そのような時に「少し自信を持って決められるようになる」ことが、本来の勉強の目的であり成果だと言えるでしょう。
従来は「何かに役立つ知識や情報を覚えるため」が勉強の主な目的と考えられてきました。しかし、インターネットの普及により、知識や情報を覚えることの比重は下がっています。今や誰もがスマートフォン一つで膨大な情報にアクセスできる時代です。何かを詳しく知っているという優位性は、以前に比べて低下しているのです。
それでも勉強の本質自体は変わりません。知識や情報のウエイトが低くなっただけで、目的はあまり変わっていないのです。むしろ情報があふれる現代では、その中から何を選び、どう判断するかという力がより重要になっています。
勉強の本質は「考えること」
勉強の本質は、得た知識や情報を使って何かを決めたり選んだりする時にどう役立てるかという点にあります。つまり、「考えること」が勉強の核心なのです。
ネットやモバイル機器の発達により勉強の形は変化していますが、勉強の本質は今も昔も変わっていません。昔は持っておくべき知識のウエイトが高かったものの、今はネットのおかげで知識の比重が軽くて済むようになりました。
その一方で、玉石混交の情報が氾濫する中で、何かの選択を迫られた時にどう判断すれば良いか、深く考える重要性のウエイトが高まってきています。情報を鵜呑みにせず、批判的に検討し、自分なりの考えを形成する力が求められているのです。
答えのある問いから答えのない問いへ
高校までの勉強は、必ず正解がある問題を解くことが中心でした。受験勉強も正解か不正解かだけの世界です。しかし、このような勉強は学びの本質とはかけ離れています。
実際には、深く勉強していくほど正解がないことの方が多いのです。学者が研究している問題の多くもはっきりした答えはありません。未知の世界を切り拓き、新しい「答え」を発見することが彼らの仕事だからです。しかもその「答え」も絶対的な正解とは限らないのです。
学問に限らず、世の中のほとんどのことは何が正解かわかっていません。だからこそ、仕事でも生活でも、正解のない問題にぶつかったときに自分なりの答えを出すために考えていく力が重要になります。
応用力と独創力の重要性
これからの時代に生き残るためには、応用力と独創力を身につけることが不可欠です。応用力とは既存の知識や技術を新しい状況に適用する能力、独創力とは前例のない問題に対して独自の解決策を生み出す能力です。
インターネットの発達により、単純な知識や情報はすぐに検索できるようになりました。しかし、それらを組み合わせて新しい価値を生み出したり、前例のない問題に対処したりする能力は、AIにも簡単には代替できません。
柳川さんは、このような応用力と独創力を身につけるための有効な手段として「独学」を推奨しています。独学では自分で考え、試行錯誤する過程が不可欠であり、それが創造的な思考力を育むのです。
独学のメリットとは
自分のペースで勉強できる
独学の最大のメリットは、自分のペースで勉強できることです。学校の授業では、理解度に関わらず一定のペースで進んでいきます。わからないところがあっても、授業は待ってくれません。逆に、すでに理解している内容でも、クラスメイトのために繰り返し説明されることもあります。
一方、独学なら、