オープンワーク社が収集した1300万件以上の社員クチコミから浮かび上がった「本当に良い会社」の姿とは何でしょうか。
就職・転職を考える人はもちろん、経営者や投資家にも示唆に富む一冊です。
大澤陽樹さんが膨大なデータから導き出した「超優良企業」の条件と実名ランキングを紹介します。
この本は就活生から経営者まで、様々な立場の人に新たな視点を提供してくれます。
本書の概要と特徴
働く人たちの生の声から見えてくる企業の真の姿。
それが本書「1300万件のクチコミでわかった超優良企業」の醍醐味です。
著者の大澤陽樹さんは、オープンワーク株式会社の代表取締役社長として、日本最大級の社員クチコミプラットフォームを運営してきました。
1985年生まれの大澤さんは、筑波大学から東京大学大学院へと進み、リンクアンドモチベーションを経て現職に至る経歴の持ち主です。
1300万件の社員クチコミが語る真実
この本の最大の特徴は、その信頼性の高さにあります。オープンワーク(旧ヴォーカーズ)に投稿されるクチコミは、厳しい投稿条件と二段階審査によって質が担保されています。正社員・契約社員として1年以上勤務した人のみが投稿可能というルールがあり、さらに機械審査と専門スタッフによる目視審査を経て初めて公開されるのです。
「就職・転職」「投資」「経営」のいずれの観点からも活用できるよう、本書では19のカテゴリーに分けた企業ランキングが紹介されています。総合評価が高いトップ40社をはじめ、社風に関する評価(チームワーク、法令順守意識など)や年代別の成長・年収アップ企業など、多角的な視点から「良い会社」を探ることができます。
19カテゴリーの企業ランキング
本書で紹介されているランキングは実に多彩です。「総合評価が高い企業トップ40社」では、社員からの総合的な評価が高い企業がずらりと並びます。興味深いのは、必ずしも名の知れた大企業ばかりではないこと。社員の満足度と企業の知名度は必ずしも比例しないことがわかります。
社風に関する評価では、「チームワークの良さ」「法令順守意識の高さ」「社員の士気の高さ」などの切り口から企業がランキングされています。例えば、オープンハウスグループは「社員の士気」が高い企業部門で1位に選ばれています。また、「人事評価の適正感」が高い企業部門では5位、「総合評価」部門でも37位にランクインしており、社員からの評価の高さがうかがえます。
年代別のランキングも興味深いものです。「20代が選ぶ成長できる企業」「30代の年収アップ幅が大きい企業」など、キャリアステージによって求めるものが異なる点に着目したランキングになっています。
社風でわかる超優良企業
企業の社風は、そこで働く人々の日々の体験を大きく左右します。本書では社風に関する様々な切り口から企業を評価し、ランキング化しています。
「社員の士気」が高い企業の特徴
「社員の士気」が高い企業のトップに立ったのは、前述のオープンハウスグループでした。トップ企業に共通するのは、社員一人ひとりが会社の方向性や目標に共感し、自分の仕事に誇りを持っていることです。単なる給与や福利厚生の良さだけでなく、「この会社で働いていることが誇らしい」と思える組織文化が根付いています。
低評価企業との決定的な違いは、経営陣と現場の距離感にあります。トップダウンの一方的な指示ではなく、社員の声に耳を傾け、現場の状況を理解した上での意思決定がなされる企業は、社員の士気も自ずと高くなるようです。
「人事評価の適正感」で選ぶ優良企業
人事評価の公平さは、社員のモチベーションを大きく左右する要素です。「人事評価の適正感」が高い企業では、評価基準が明確で、結果だけでなくプロセスも適切に評価される仕組みが整っています。
特筆すべきは、評価結果に対するフィードバックの質と頻度です。優良企業では、定期的な面談を通じて評価結果の理由が丁寧に説明され、今後の成長に向けたアドバイスも提供されます。このような透明性の高い評価システムが、社員の信頼を勝ち取り、モチベーションの向上につながっているのです。
「チームワーク」が良い企業ランキング
良好なチームワークは、業務効率だけでなく職場の雰囲気や社員の幸福度にも大きく影響します。「チームワーク」の評価が高い企業では、部署間の壁を越えた協力体制が確立されています。
これらの企業に共通するのは、「風通しの良さ」です。役職や年齢に関係なく意見を言いやすい雰囲気があり、異なる部署間でも情報共有がスムーズに行われます。また、個人の成果だけでなくチームとしての成果も適切に評価される仕組みがあり、協力して仕事を進めることへのインセンティブが働いています。
このような環境では、一人の社員のアイデアが別の社員によって発展させられ、さらに別の社員によって実現されるという相乗効果が生まれやすくなります。結果として、組織全体の創造性と生産性が向上するのです。
年代別・職種別の超優良企業
キャリアステージや職種によって、働く人が企業に求めるものは異なります。本書では、年代別・職種別の視点からも企業を評価しています。
20代が選ぶ「成長できる」企業
若手社員にとって最も重要なのは「成長できるか」という点です。20代からの評価が高い企業に共通するのは、若手の育成に力を入れていることです。具体的には、体系的な研修プログラムの充実、先輩社員によるメンタリング制度の整備、若いうちから責任ある仕事を任せる文化などが挙げられます。
また、キャリアパスの明確さも重要なポイントです。「この会社でどのように成長していけるのか」「どのようなキャリアを築けるのか」が見えることで、若手社員は安心して自己投資を行うことができます。加えて、挑戦機会の提供も欠かせません。失敗を恐れずに新しいことに取り組める環境があることで、若手の成長スピードは格段に上がります。
30代の「年収アップ幅」が大きい企業
30代になると、多くの人は家庭を持ち、責任も増えてきます。そのため、年収の上昇は重要な関心事となります。「30代の年収アップ幅」が大きい企業では、中堅社員の待遇改善に積極的な姿勢が見られます。
これらの企業では、単に勤続年数に応じた昇給だけでなく、スキルと経験に見合った報酬体系が整備されています。また、管理職への登用も比較的早く、30代で部下を持ち、より大きな責任と共に報酬も増える仕組みになっています。
興味深いのは、年収アップ幅が大きい企業は必ずしも初任給が高いわけではないという点です。むしろ、入社後の成長に応じて適切に評価し、報酬に反映させる仕組みが整っている企業が多いようです。
「営業職」が評価する優良企業
営業職は多くの企業で重要な役割を担っていますが、その働き方や評価方法は企業によって大きく異なります。「営業職」からの評価が高い企業では、適切なサポート体制と評価制度が整っています。
具体的には、営業活動に必要な情報やツールが充実していること、バックオフィスのサポートが手厚いこと、顧客との関係構築に時間をかけられる環境があることなどが挙げられます。また、単純な売上だけでなく、顧客満足度や新規開拓の努力なども評価に含まれる多面的な評価システムを持つ企業が高く評価されています。
営業職が働きやすいと感じる環境では、個人の裁量が大きく、創意工夫を発揮できる余地があります。同時に、チーム全体で情報や知見を共有し、互いに高め合う文化も根付いています。このバランスが、営業職の満足度と成果の両方を高めているようです。
多様な働き方を支える企業
働き方の多様化が進む現代において、様々なバックグラウンドや事情を持つ人々が活躍できる環境を整えることは、企業の重要な課題となっています。
「女性が働きやすい」と評価される企業
女性が働きやすいと評価される企業では、ワークライフバランスへの配慮が行き届いています。具体的には、柔軟な勤務時間制度、在宅勤務の選択肢、充実した育児支援制度などが整備されています。
しかし、単に「働きやすさ」だけでなく、キャリア形成と家庭の両立支援も重要です。優良企業では、出産・育児によるキャリアの中断後も、スムーズに復帰できる仕組みや、時短勤務中でもキャリアアップの機会が確保されています。また、管理職に占める女性の割合も高く、ロールモデルが身近に存在することで、若手女性社員のキャリア意識も高まります。
これらの企業に共通するのは、「多様性を尊重する文化」の存在です。性別によらず個人の能力や貢献が評価され、それぞれのライフステージに合わせた働き方が選択できる環境が整っています。
「ベンチャー企業」から選ぶ優良企業
未上場のベンチャー企業は、上場企業に比べて情報が少なく、就職や転職の判断が難しいものです。しかし、本書では「未上場の日系企業から選ぶ超優良企業」というカテゴリーも設けられており、貴重な情報源となっています。
未上場でも高評価を得ている企業の特徴としては、明確なビジョンと成長戦略の存在、風通しの良い組織文化、挑戦を奨励する風土などが挙げられます。また、経営陣と社員の距離が近く、自分の意見や提案が直接経営に反映される可能性が高いことも魅力の一つです。
成長企業ならではの魅力としては、事業拡大に伴う新たな役割やポジションの創出、自分の成長と会社の成長を同時に実感できることなどがあります。一方で、組織体制や制度が発展途上であるという課題もあります。しかし、高評価を得ているベンチャー企業では、成長に合わせて適切に組織や制度を整備する努力がなされています。
例えば、Sky株式会社は「未上場の日系企業から選ぶ超優良企業」部門で12位にランクインしているほか、「総合評価」が高い企業20位、「技術職」が選んだ超優良企業12位にも選出されています。未上場企業でありながら、複数の部門で高評価を得ていることは注目に値します。
感想・レビュー
データが語る「良い会社」の真実
本書の最大の魅力は、企業の表面的な評判を超えた洞察を提供してくれる点にあります。世間的な知名度や華やかなイメージだけでは測れない、「実際にそこで働く人々の声」に基づいた企業評価は、非常に説得力があります。
特に印象的だったのは、必ずしも大手有名企業ばかりがランクインしているわけではないという事実です。むしろ、一般にはあまり知られていないものの、社員からの評価が非常に高い「隠れた良い会社」が多数紹介されています。これは就活生や転職者にとって、視野を広げる貴重な情報となるでしょう。
また、企業評価の多角的な視点も本書の強みです。「総合評価」だけでなく、「社員の士気」「チームワーク」「人事評価の適正感」など、様々な切り口から企業を評価することで、読者は自分が重視する要素に基づいて企業を選ぶことができます。
就活生・転職者が見落としがちなポイントとして、「企業文化と自分との相性」があります。本書では、各企業の社風や価値観が社員のクチコミを通して浮き彫りになっており、単なる待遇面だけでなく、「自分がその企業で活き活きと働けるか」を判断する材料を提供してくれます。
経営者・人事担当者にとっての価値
本書は就職・転職希望者だけでなく、経営者や人事担当者にとっても大きな価値があります。他社の優れた取り組みを知ることで、自社の改善点を発見するヒントになるからです。
例えば、「人事評価の適正感」が高い企業の評価システムや、「チームワーク」が良い企業の組織文化など、具体的な成功事例を参考にすることで、自社の人事制度や組織風土の改善に役立てることができます。
また、人材確保が困難な時代において、「社員から選ばれる企業」になるための具体的アプローチも本書から学ぶことができます。特に、年代別・職種別の分析は、ターゲットとする人材層に合わせた採用戦略や人材育成策を考える上で参考になるでしょう。
個人的に興味深かったのは、「社員の士気」と「業績」の関連性です。社員の士気が高い企業は、長期的に見て業績も安定している傾向があるようです。これは、社員のエンゲージメントが企業の持続的成長にとって重要な要素であることを示唆しています。
まとめ
クチコミデータが示す企業選びの新基準
本書「1300万件のクチコミでわかった超優良企業」は、従来の企業評価を覆す新たな視点を提供してくれます。売上高や利益率といった財務指標だけでなく、「そこで働く人々の声」という質的データに基づいた企業評価は、これからの時代に求められる企業選びの新基準となるでしょう。
特に、働き方の多様化が進み、個人のキャリア観も多様化する現代において、「自分にとっての良い会社」を見つけるためには、実際にそこで働く人々の生の声を聞くことが不可欠です。本書はその貴重な情報源となっています。
読者それぞれの立場で活用できる一冊
本書の魅力は、読者の立場に応じて様々な活用方法がある点です。就職・転職希望者にとっては企業研究の強力なツールとなり、経営者や人事担当者にとっては自社の改善点を発見するための洞察の源泉となります。また、投資家にとっては、財務諸表だけでは見えてこない企業の内部状況や社員のエンゲージメントを知る手がかりとなり、長期的な投資判断に役立つでしょう。
本書で紹介されている19のランキングは、「総合評価が高い企業トップ40社」をはじめ、「社員の士気が高い企業」「人事評価の適正感が高い企業」「チームワークが良い企業」など多岐にわたります。また、「20代で成長できる企業」「30代年収アップ幅が大きい企業」「女性が働きやすい企業」など、年代別・属性別のランキングも充実しており、読者それぞれの関心に合わせた情報を得ることができます。
大澤陽樹さんは、オープンワーク株式会社の代表取締役社長として、日本最大級の社員クチコミプラットフォームを運営してきた経験から、企業の「内側」と「外側」のギャップについて鋭い洞察を持っています。本書はその知見を余すところなく伝える、貴重な一冊といえるでしょう。
企業選びの新たな視点を提供してくれるこの本は、これからの時代を生きる私たちにとって、かけがえのない羅針盤となることでしょう。自分らしく働ける場所を見つけるため、あるいは自社をより良い職場にするため、ぜひ手に取ってみてください。



