「言葉に詰まってモヤモヤする…」そんな経験はありませんか?会議で急に意見を求められて頭が真っ白になったり、自分の気持ちをうまく表現できずに後悔したり。そんな「言語化できない」悩みを解決するのが『こうやって頭のなかを言語化する。』(荒木俊哉著)です。
世界三大広告賞受賞のトップコピーライターである著者が、20年の経験から編み出した「言語化ノート術」を通じて、たった1日3分×5日間で頭のモヤモヤを言葉に変える方法を伝授しています。
本書の概要
著者プロフィール:世界三大広告賞受賞のトップコピーライター
著者の荒木俊哉さんは、世界三大広告賞をはじめとする国内外で20以上の賞を受賞した一流のコピーライターです。HONDAの「ひとこと」など、私たちの記憶に残る名コピーを手がけてきた方でもあります。
コピーライターとしての仕事は、クライアントの思いを「ひとこと」に凝縮すること。そのためには、相手の話をじっくり聞き、その中から本質を見抜く力が必要です。荒木さんはこの「聞く力」こそが言語化の基本だと説きます。
国家資格キャリアコンサルタントも取得されており、言葉を使って人の成長を支援する仕事にも携わっています。「言語化力は、生きる力そのものだ」という言葉に、著者の信念が表れています。
前著『瞬時に「言語化できる人」が、うまくいく。』からの発展
本書は、10万部を超えるベストセラーとなった前著『瞬時に「言語化できる人」が、うまくいく。』の実践編とも言える一冊です。前著で提唱された言語化の重要性をさらに掘り下げ、より具体的な方法論へと発展させています。
著者自身、新人時代にはなかなか結果を残せず異動の危機に陥ったこともあったそうです。そんな著者が躍進した要因は、日々言語化力を磨いてきたことにあります。言語化力は才能ではなく、正しい方法で訓練すれば誰でも身につけられるスキルだという確信が本書の根底にあります。
1000人以上の体験者の声を活かした新メソッド
本書の「言語化ノート術」は、前著の読者や著者のセミナー参加者など、1000人以上の体験者からのフィードバックを活かして開発されました。約1年という時間をかけて練り上げられたこのメソッドは、「続けやすさ」を最重視した設計になっています。
「問いを立てるのが難しい」「どんな問いを立てたらいいのかわからない」といった声に応え、誰でも簡単に実践できる3ステップの方法を提案しています。1日たった3分で実践できるシンプルさが、このメソッドの最大の特徴です。
言語化力の高い人の特徴
「自分で自分の話を聞く」習慣がある
言語化力の高い人には共通する特徴があります。それは「自分で自分の話を聞く」習慣を持っているということです。
私たちは普段、他者の話を聞くことはあっても、自分自身の内なる声に耳を傾けることは意外と少ないものです。しかし、言語化力の高い人は、自分の頭の中で起きていることに意識的に注意を向け、その声を「聞く」ことを習慣にしています。
例えば、何か決断をするとき、頭の中でどんな思考が巡っているのか、どんな感情が湧いているのかを観察し、それを言葉として捉えようとします。この「自分の頭の中の声を聞く」という行為が、言語化の第一歩なのです。
自問自答を通して思考を深める
言語化力の高い人のもう一つの特徴は、自問自答を通して思考を深めていることです。荒木さんは「思考=自問自答」だと定義しています。
「なぜ、そう思うのか」「なぜ、そう感じるのか」と自分に問いかけることで、漠然とした感覚や印象を言葉に変換していきます。この問いがあってはじめて、人は言葉になっていない思いや意見を言語化しようとするのです。
例えば「この人、なんとなく嫌だ」という感覚があったとき、そのままにせず「なぜ嫌だと感じるのか」と自問自答することで、その理由が明確になり、モヤモヤした感情が一気にクリアになります。
自分の軸を言語化している
言語化力の高い人は、自分の価値観や信念、つまり「自分の軸」を言語化しています。「どう生きたいか」「何を大切にしているか」といった根本的な部分を言葉にすることで、日々の判断や行動に一貫性が生まれるのです。
自分の軸が言語化されていると、様々な場面で迷いや悩みが減っていきます。なぜなら、判断の基準がすでに明確になっているからです。例えば仕事の選択や人間関係の悩みに直面したとき、自分の軸に照らし合わせることで、自分にとって正しい選択がわかりやすくなります。
「自分の人生は自分で決める」という当たり前のことが、実は言語化力によって実現されるのです。
言語化につながる「聞き方」のコツ
「できごと→感じたこと」の順番で聞く
言語化を促すには、聞き方にもコツがあります。荒木さんが提案するのは、「できごと→感じたこと」の順番で聞くという方法です。
人は一般的に、具体的な「できごと」は比較的簡単に言語化できます。一方で、「感じたこと」のような抽象的な思いや意見はなかなか言語化しにくいものです。そこで、まず「できごと」から聞いていくことで、その後の「感じたこと」も引き出しやすくなります。
例えば、「今日のプレゼンはどうだった?」と直接感想を聞くよりも、「今日のプレゼンで印象に残ったことは?」と具体的な出来事を聞いてから、「それを見てどう感じた?」と進めていくほうが、相手は答えやすくなります。この順序は自分自身に問いかける際にも有効です。
アドバイスせず、決めつけない
言語化を促す上で大切なのは、アドバイスしようとしたり、決めつけたりしないことです。特に他者の言語化を手助けする場合、つい「こうすべきだ」「それは〇〇という意味だよね」と解釈を押し付けがちですが、それは避けるべきです。
同様に、自分自身の言語化においても、先入観や固定観念にとらわれず、オープンな姿勢で自分の思考や感情と向き合うことが重要です。無理に納得させようとしたり、決めつけたりすると、自問自答の幅、つまり思考の幅が狭まってしまいます。
言語化のプロセスは、答えを見つけるというよりも、自分の内側にある本当の思いを発見していく旅のようなものです。その旅を豊かにするためには、先入観なく、好奇心を持って自分の内面に耳を傾けることが大切です。
言葉の意味を深める問いかけをする
言語化をさらに深めるには、言葉の意味を掘り下げる問いかけが効果的です。同じ言葉でも、人によって込められた意味は異なります。その人なりの意味を引き出すことで、より深い言語化が可能になります。
例えば、「この仕事は楽しい」という言葉が出てきたとき、「楽しいとはどういう意味?」「どんなときに楽しいと感じる?」と掘り下げることで、その人にとっての「楽しい」の本当の意味が明らかになります。
この問いかけは、他者との対話だけでなく、自分自身との対話においても有効です。自分が何気なく使っている言葉の奥にある本当の意味を探ることで、自己理解が深まり、より精度の高い言語化が可能になります。
「言語化ノート術」の3ステップ
ステップ1:心が動いたできごとをメモする
言語化ノート術の第一ステップは、「ためる」です。日常生活の中で心が動いたできごとと、それに対して感じたことをセットでメモしていきます。
例えば、「プレゼン終了(できごと)→テンション上がった(感じたこと)」というように、シンプルな形で記録します。この段階では深く考える必要はなく、心に引っかかったことを短い言葉でメモするだけで構いません。
このプロセスを通じて、自分がどんなときに心を動かされるのか、どんな感情が湧きやすいのかといったパターンに気づくことができます。また、日常の小さな出来事に意識を向けることで、自分自身への感度が高まっていきます。
ステップ2:「のはなぜか?」を足して問いかける
次のステップは「きく」です。ステップ1でメモした「できごと+感じたこと」に、「のはなぜか?」という問いを足します。例えば、「プレゼン終了でテンションが上がったのはなぜか?」という形です。
この問いに対して、思いつく限りの答えを3分間で5つ以上、ザクザク書き出していきます。最初は表面的な答えかもしれませんが、書き続けるうちに、自分でも気づいていなかった本音や価値観が浮かび上がってくることがあります。
このプロセスは、頭の中のモヤモヤを言葉という形に変換する作業です。「のはなぜか?」という問いが加わっただけで、一気に頭が動き出し、思考が活性化されます。
ステップ3:現時点での結論を1行でまとめる
最後のステップは「まとめる」です。ステップ2で書き出した多くの言葉の中から、同じ言葉や似た言葉、何度も出てくる言葉を見つけて丸をつけます。そして、それらをもとに現時点での結論を1行でまとめます。
この「結論」は、その時点での自分の考えや価値観を凝縮したものです。完璧である必要はなく、今の自分にしっくりくる言葉でまとめられているかどうかが大切です。また、翌日以降に見直して何度でも書き直すことができるので、あまり固く考えず「ゆるく」取り組むことが重要です。
このプロセスを通じて、自分の中にある価値観や考え方のパターンが明確になり、自分自身への理解が深まっていきます。また、この結論を「どうすればもっとわかりやすい表現になるか」という視点でブラッシュアップすることで、自分の頭の中に明確なフレーズとしてストックされていきます。
実践編:5日間で変わる言語化習慣
1日3分で続けられるシンプル設計
言語化ノート術の最大の特徴は、1日たった3分で実践できるシンプルさです。「言語化を習慣にすること」が最も難しいという課題に対応するため、続けやすさを最重視した設計になっています。
朝の通勤時間や、寝る前のちょっとした時間など、日常の隙間時間を活用して取り組めるため、忙しい現代人でも無理なく続けられます。また、特別な道具も必要なく、スマートフォンのメモアプリやノートがあれば十分です。
著者は「とにかく5日間だけやってみてほしい」と言います。たった5日間の実践でも、自分の思考パターンや価値観に気づき、コミュニケーションや意思決定がスムーズになるという変化を実感できるそうです。
具体的な実践例と効果
実際に言語化ノート術を実践した人々からは、様々な効果が報告されています。
あるビジネスパーソンは、仕事の提案前に言語化ノート術を実践することで、自分の提案の核心が明確になり、プレゼンの質が向上したと言います。また、別の人は日常的な人間関係の悩みに対して言語化ノート術を適用し、自分が本当に求めているものが何かを発見できたと報告しています。
例えば、「上司との関係がうまくいかない(できごと)→イライラする(感じたこと)のはなぜか?」という問いから始め、様々な理由を書き出した結果、「実は自分は承認欲求が強く、もっと仕事を評価してほしいと思っていた」という本音に気づいたというケースもあります。
このように、日常の小さな出来事から大きな人生の選択まで、様々な場面で言語化ノート術は効果を発揮します。
言語化を習慣にするためのコツ
言語化を習慣にするためのコツとして、著者はいくつかのポイントを挙げています。
まず、完璧を目指さないことです。特に始めたばかりのときは、「うまく言語化できない」「深い気づきが得られない」と感じることもあるかもしれませんが、それは自然なプロセスの一部です。大切なのは継続することであり、続けるうちに徐々に言語化の質も高まっていきます。
また、自分にとって取り組みやすい時間や場所を見つけることも重要です。朝型の人は起床後の静かな時間に、夜型の人は就寝前の落ち着いた時間に取り組むなど、自分のリズムに合わせることで続けやすくなります。
さらに、言語化ノート術の「そなえる」というオプションステップも活用すると効果的です。これは、ステップ3でまとめた結論をもとに、今後どう行動していくかという具体的な行動計画を立てるステップです。「結論」を実際の行動に結びつけることで、言語化の効果をより実感しやすくなります。
言語化がもたらす効果
モヤモヤした感情がクリアになる
言語化の最も大きな効果の一つは、モヤモヤした感情がクリアになることです。「なんとなく嫌だ」「なんとなく不安だ」といった曖昧な感情は、言語化されないままだと私たちの心を長く占領し、エネルギーを消耗させます。
しかし、それを言語化することで、感情の正体が明らかになり、対処法も見えてきます。例えば、「新しいプロジェクトに不安を感じる」という漠然とした感情を言語化すると、「実は自分のスキル不足を心配している」「チームメンバーとの関係構築に自信がない」など、具体的な不安の要素が見えてきます。
そうすると、「必要なスキルを学ぶ」「チームビルディングに時間を投資する」といった具体的な対策が立てられるようになります。このように、言語化はモヤモヤした感情を整理し、行動につなげる橋渡しの役割を果たします。
悩みの本質を掴める
言語化のもう一つの大きな効果は、悩みの本質を掴めるようになることです。私たちが抱える悩みの多くは、実は表面的な問題ではなく、もっと深いところに本質があることが少なくありません。
例えば「仕事がうまくいかない」という悩みを持っているとき、その表面的な理由は「スキル不足」や「人間関係」かもしれません。しかし、言語化ノート術を使って深掘りしていくと、「実は自分が本当にやりたい仕事ではないから、モチベーションが上がらない」という本質に気づくことがあります。
この「本質の発見」こそが、問題解決への大きな一歩となります。表面的な対処ではなく、根本的な解決策を見つけることができるからです。言語化ノート術を続けていくと、自分の悩みや問題の本質を見抜く力が自然と身についていきます。
意思決定がスムーズになる
言語化の三つ目の効果は、意思決定がスムーズになることです。日々の生活では大小さまざまな決断を迫られますが、選択肢が多いほど、また重要な決断であるほど、私たちは迷いがちです。
しかし、自分の価値観や判断基準が言語化されていると、「自分にとって何が大切か」という軸に照らし合わせて判断できるようになります。例えば転職を考えるとき、「給料」「やりがい」「ワークライフバランス」など様々な要素がありますが、自分が最も重視する価値観が明確になっていれば、迷いが少なくなります。
また、言語化ノート術を通じて自分の過去の決断を振り返ることで、「自分はこういう判断をする人間だ」という自己理解も深まります。これにより、将来の意思決定においても一貫性が生まれ、後悔の少ない選択ができるようになるのです。
感想・レビュー
言語化力は才能ではなく努力で高められる
この本を読んで最も印象に残ったのは、「言語化力は才能ではなく、努力で高められるスキルである」という著者の主張です。私自身、これまで「言葉が出てこない」「うまく表現できない」と悩むことが多く、それは生まれつきの才能の差だと諦めていました。
しかし荒木さんは、言語化力は筋トレのように、正しい方法で継続的に鍛えることで誰でも身につけられると説きます。特に「言語化ノート術」という具体的な方法論を示してくれたことで、「これなら私にもできるかもしれない」と希望が湧きました。
著者自身も新人時代は言語化に苦労し、結果を出せなかった時期があったという告白も勇気づけられます。コピーライターという「言葉のプロ」でさえ、最初から言語化が得意だったわけではないのです。この正直な姿勢が、読者の背中を押してくれる力になっています。
日常の「なんとなく」を具体的な言葉に変える威力
本書を読んで実践してみて驚いたのは、日常の「なんとなく」を具体的な言葉に変える威力です。例えば「なんとなく気分が落ち込む」という漠然とした感覚を、言語化ノート術で掘り下げてみると、「最近、自分の成長を実感できていないことへの焦りがある」という具体的な原因が見えてきました。
このように、モヤモヤとした感覚が明確な言葉になると、対処法も見えてきます。「成長を実感するために、小さな目標を設定して達成感を味わおう」といった具体的なアクションプランが立てられるようになったのです。
言葉にすることで、問題が自分の外に出て、客観的に見られるようになる—この感覚は、まるで頭の中の霧が晴れていくようで、とても爽快です。日常の小さな「なんとなく」を放置せず、言葉にする習慣をつけることの大切さを実感しました。
仕事や人間関係への応用可能性
言語化力は、仕事や人間関係など、あらゆる場面で応用できる可能性を秘めています。例えば仕事では、自分のアイデアや提案を明確に伝えることができれば、周囲を動かす力が格段に高まります。また、チームでの話し合いでも、自分の意見を的確に表現できれば、建設的な議論に貢献できるでしょう。
人間関係においても、「なんとなく相性が悪い」と感じる相手との関係を言語化してみると、「価値観の違い」や「コミュニケーションスタイルの不一致」など、具体的な原因が見えてくることがあります。そうすれば、関係改善のための具体的なアプローチも考えられるようになります。
特に印象的だったのは、言語化力が高まると「聞く力」も同時に向上するという点です。相手の言葉の奥にある本当の思いや意図を汲み取る力が身につくことで、より深い人間関係を築けるようになるのではないかと感じました。
まとめ
『こうやって頭のなかを言語化する。』は、言語化力を高めるための具体的な方法論を示した実践的な一冊です。著者の荒木俊哉さんが提案する「言語化ノート術」は、1日3分という手軽さで、誰でも無理なく続けられる設計になっています。この方法を5日間実践するだけで、自分の思考や感情がクリアになり、悩みの本質を掴み、意思決定がスムーズになるという効果が期待できます。言語化力は特別な才能ではなく、正しい方法で訓練すれば誰でも身につけられるスキルです。この本を通じて、頭の中のモヤモヤを言葉に変え、自分自身の軸を見つけることで、より充実した人生を送るヒントが得られるでしょう。