「会話が苦手」「人と話すのが緊張する」そんな悩みを抱える人に向けて書かれた『聞く習慣』。
元コミュ障を自称するいしかわゆきさんが、インタビューライターとして培った「聞く」技術を惜しみなく公開した一冊です。「興味を持てない相手」とも会話を続けるコツが満載で、読むだけで明日からの人間関係が変わりそうな予感がします。
元コミュ障ライターが見つけた「聞く」という武器
「人と話すのが苦手」という人は少なくありません。でも、よく考えてみると、親しい友人や家族との会話には困らないものです。リラックスして話せて、聞きたいことも自然と湧いてくる。
本当に頭を抱えるのは、会社の先輩、後輩、上司、取引先など、それほど親しくない人、あるいは親しくなりたいと思えない人と話すときではないでしょうか。
「興味を持てない相手」との会話こそが本当の悩み
「仕事相手との距離を縮めたいけど、話すことがないな……」
「今度、上司と飲むけど、プライベートには興味が湧かないな……」
こういった「興味を持てない相手」との会話こそ、「なにを話せばいいかわからない」「聞きたいことがない」という感情を抱いてしまう、会話の悩みの本質と言えるでしょう。
本書の著者であるいしかわゆきさんも、かつては多くの人に対して「興味を持てない」と悩んでいました。
「ぶっちゃけわたし、他人にあまり興味がありません。べつに誰がどんなふうに生きていてもいいし、好きにすればいいじゃんと思っています。だから、根掘り葉掘り聞きたいこともない」
と著者は正直に告白しています。
ひとり旅に出かけても誰とも交流せず、ひとりで居酒屋に行っても動画を観ながらビールを飲む。「知らない人と話したい!」という願望がほとんどない。そんな著者が、会話や雑談に関する本を読んで「目の前の相手に興味を持ちましょう」と書かれていたら、「それができたら苦労しないんだよ!」と毒づいていたそうです。
「インタビュアー」になれば誰とでも話せる
習いごとやバイト先では友だちができずに直帰する日々、飲み会ではお酒をたくさん飲んで酔っ払うことで自分を騙し、とりあえず笑っておく。人とペアを組む授業がつらい。大人数の集まりがつらい。人と向き合うことがつらい。
たまたま隣になったクラスメイトに「あなたの隣はつまらない」と言われたこともある。「自分といてもつまらないだろうな」と感じて、人と関わることを避けてきた。
そんな著者が、人とそれなりにコミュニケーションを取れるようになったのは、「インタビューライター」になったことが大きいと言います。
最初は緊張して挙動不審になってしまったり、尋問のようになってしまったり、変な質問をして相手を困らせてしまったりと、いろいろな失敗をしました。しかし、そんな経験を重ねるうちに、自分が積極的に話さずとも「会話」がきちんと成り立ち、質問を投げかけられるようになりました。
自分が1を振って、相手に10話してもらう方法
やがて著者は「自分が1を振って、相手に10話してもらう。これでいいんだ」という気づきを得ました。
その気づきは仕事の現場のみならず、私生活でも役立ち、気づけば聞き役に徹することが増えたそうです。そしてただ話を聞いているだけなのに、感謝されたり、好印象を持たれることが増えました。
相手に興味を持てなくても、インタビュアーの気持ちになって「自分」や「読者」のために話を「聞く」。そうすれば、どんな相手ともラクに会話ができるようになっていくのです。
会話のハードルを下げるテクニック
会話が苦手な人にとって、最初の一歩を踏み出すのは勇気がいることです。でも、ちょっとしたコツを知っているだけで、会話のハードルはグッと下がります。
「1対1」のサシで話す状況をつくる
大前提として、複数人が集まる飲み会やイベントは「聞く」ハードルが一番高いものです。複数人の厄介なところは、「話し手」「聞き手」がたくさんいること。誰が誰の話を聞いているのかわからなくなり、会話が混乱しがちです。
そこで著者が勧めるのは、できるだけ「1対1」の状況をつくること。たとえば、飲み会の席で隣に座った人と話す、休憩時間に一緒になった人と話す、帰り道が同じ人と話すなど、自然と「サシ」になる状況を活用しましょう。
複数人の中でも、少し離れた場所に座っている人に「〇〇さんって、△△が好きなんですか?」と話しかければ、自然と1対1の会話が生まれます。
会話前の「情報収集」が成功の鍵
会話の前に相手について少し調べておくと、話のきっかけが見つけやすくなります。SNSをチェックしたり、共通の知人から情報を得たりするのも一つの方法です。
「〇〇さんって、△△に興味があるんですよね?」と切り出せば、相手は「え、なんで知ってるの?」と驚きつつも、話が弾みやすくなります。
ただし、あまりにもプライベートな情報を持ち出すと、「ストーカー?」と思われかねないので注意が必要です。公開されている情報や、自然に知り得る情報の範囲にとどめておきましょう。
「聞きたいことメモ」を忍ばせるコツ
著者は会話の前に「聞きたいことメモ」を作っておくことを勧めています。スマホのメモ帳に箇条書きで書いておき、トイレに行くふりをして確認するという方法です。
「あ、そういえば〇〇さんに△△のこと聞きたかったんですよ」と自然に話題を振ることができます。会話が途切れそうになったときの保険にもなりますし、相手に「ちゃんと自分の話を聞いてくれている」という印象を与えることができます。
面白い話を引き出す質問術
会話を続けるためには、相手から面白い話を引き出す質問力が欠かせません。どんな質問をすれば、相手は楽しく話してくれるのでしょうか。
「粗探し」より「おもしろポイント」を見つける
人の話を聞くとき、つい欠点や矛盾点を探してしまう人がいます。でも、それでは相手は警戒して本音を話してくれなくなります。
著者は「粗探し」ではなく「おもしろポイント」を見つけることを勧めています。「へえ、それ面白いですね」「そこがポイントなんですね」と相手の話の中から興味深い部分を見つけて反応すれば、相手はもっと話したくなります。
「なぜそう思ったんですか?」「どうしてそうなったんですか?」と掘り下げる質問をすれば、会話はさらに深まります。
「オススメ」を聞いて、その場でポチる
相手に「最近ハマっているものは?」「オススメの〇〇は?」と聞き、その場でスマホで検索したり、Amazonでポチったりするのも効果的です。
「へえ、それ気になります!今ポチっちゃいました」と言えば、相手は「自分の言葉が相手の行動に影響を与えた」という満足感を得られます。次に会ったときに「あのとき教えてもらった〇〇、すごく良かったです!」と伝えれば、さらに関係が深まります。
主語を「自分」から「みんな」に変える効果
質問するとき、「私は〇〇だと思うんですが、どう思いますか?」と自分の意見を前面に出すと、相手は同調するか反論するかの二択を迫られます。
そこで「最近、みんな〇〇について話してますよね。〇〇さんはどう思いますか?」と主語を「みんな」に変えると、相手は自分の意見を言いやすくなります。「みんな」という曖昧な主語を使うことで、相手は「世間の流れに乗り遅れている」と感じず、素直に自分の考えを話せるようになるのです。
うまく返せば会話が止まらなくなる
質問だけでなく、相手の話にどう返すかも会話を続けるポイントです。上手な返し方を身につければ、会話は自然と弾むようになります。
「つなぎ言葉」で時間をかせぐテクニック
相手の話を聞いたあと、すぐに返答できないときは「つなぎ言葉」を使いましょう。「なるほど」「それで?」「それから?」「それはすごい」などの言葉を挟むことで、考える時間をかせぐことができます。
著者は会話の中で、瞬間的に返答できないことがあるそうです。言われたことを頭の中で整理するのに時間がかかるから。そんなとき、つなぎ言葉が役立ちます。
「ヤバくない?」と言われたら「ヤバーい」と返す
若者言葉や流行語がわからなくても、オウム返しすれば大丈夫です。「ヤバくない?」と言われたら「ヤバーい」、「エモくない?」と言われたら「エモいよね」と返せば、会話は続きます。
意味がわからなくても、相手の言葉をそのまま使って返すことで、「共感している」という印象を与えることができます。後で意味を調べれば、次からは自信を持って使えるようになります。
「知ったかぶり」より無知の「知りたがり」になる
わからないことがあっても、「知ったかぶり」をするのはやめましょう。嘘はいつか必ずばれます。
代わりに「それ、よく聞くんですけど、実は詳しくなくて…教えてもらえますか?」と素直に無知を認めて質問すれば、相手は喜んで教えてくれます。人は自分の知識を披露する機会を求めているものです。
「知りたがり」になることで、相手は「自分の話を聞いてくれる人」として好印象を持ってくれるでしょう。
会話の落とし穴と対処法
会話には様々な落とし穴があります。それを知っておくことで、会話への不安や恐怖心を軽減することができます。
会話が途切れた「シーン」を怖がらない
会話が途切れて「シーン」となる瞬間を恐れる人は多いですが、実はそれほど気にする必要はありません。沈黙は自然なものであり、常に話し続ける必要はないのです。
著者は「シーン」となったら、「今、何考えてるんですか?」と聞くことを勧めています。相手は「え?」と驚きつつも、自分の考えを話し始めるでしょう。あるいは「今日の天気いいですね」「この料理おいしいですね」など、目の前にあるものについて話題を振るのも効果的です。
「楽しませなきゃ」というプレッシャーから解放される
会話になると「楽しませなくちゃ!」というプレッシャーを感じる人は多いですが、それは自分で自分を追い詰めているだけです。
相手を楽しませるのは自分の役目ではありません。相手の話を聞き、適切に反応するだけで十分です。「面白いことを言わなきゃ」と思わず、「相手の話を引き出そう」と考えれば、会話はずっとラクになります。
「この会話に意味ある?」と思わなくなる秘訣
「くだらない話をして時間の無駄では?」「この会話に意味があるのか?」と考えてしまう人もいますが、会話の目的は情報交換だけではありません。
人と話すこと自体に意味があります。会話を通じて関係性を築き、信頼を深めていくのです。「意味のある会話」を求めすぎず、ただ相手と時間を共有することを楽しみましょう。
「書く」ことで「聞く」が習慣になる
著者は「書くこと」と「聞くこと」はセットだと考えています。「書く」ことで「聞く」がさらに習慣化し、スキルアップしていくのです。
メモを取る習慣がもたらす変化
著者は学生時代から友達と話したいことをメモに書いていったり、聞いた話を忘れないようにメモをとったりしていました。頭の中に留めておいても忘れてしまいますし、せっかく会話して知った情報をこぼしてしまうのはもったいないからです。
メモを取る習慣は、相手の話をより深く理解することにつながります。また、次に会ったときに「前回話してくれた〇〇、その後どうなりました?」と聞けば、相手は「ちゃんと覚えていてくれたんだ」と喜びます。
聞いた情報を自分の知識にする方法
聞いた情報は、そのままにしておくのではなく、自分の言葉で書き直してみましょう。ブログやSNSに投稿したり、日記に書いたりすることで、情報が自分の知識として定着します。
「〇〇さんから聞いた話なんですが…」と引用しながら書くことで、相手への敬意も示せますし、自分の理解も深まります。書くことで「聞く」が習慣になり、さらに「聞く」力が高まるという好循環が生まれるのです。
頭ひとつ抜けるための情報収集術
今の時代、情報があふれています。その中で頭ひとつ抜けるためには、質の高い情報を効率よく収集する必要があります。
著者は「書く前提で聞く」ことを勧めています。ブログやSNSの投稿ネタを集めるつもりで人の話を聞けば、自然と質問力が高まります。「これは書けるな」と思える情報を意識的に集めることで、会話の質も向上するでしょう。
「自分は相手に全く興味がなくても、読者は興味があるかもしれない。だから話を聞く」という考え方は、会話への恐怖感を小さくする効果もあります。
感想・レビュー
『聞く習慣』を読んで、まず感じたのは著者の正直さです。「他人に興味がない」と堂々と言い切る潔さに、同じような悩みを持つ人は共感するのではないでしょうか。
コミュニケーションの本質を突いた一冊
多くのコミュニケーション本が「相手に興味を持ちましょう」と説くなか、この本は「興味がなくても大丈夫」と言ってくれる点が画期的です。「相手に興味を持てない自分」を責める必要はなく、「自分のため」に聞くという視点を持てば、会話はもっとラクになります。
インタビューライターという職業柄、著者は「聞く」ことのプロです。その技術を惜しみなく公開してくれているので、読者は明日から使える実践的なテクニックを得ることができます。
「聞く」ことは、相手の話を引き出すだけでなく、自分自身の知識や視野を広げることにもつながります。著者は「聞くことはコスパが最強」と言いますが、確かに少ない労力で大きなリターンが得られる行為と言えるでしょう。
「聞く」ことがコスパ最強の理由
なぜ「聞く」ことがコスパ最強なのでしょうか。それは、「話す」よりも「聞く」方が、はるかに少ないエネルギーで大きな効果を得られるからです。
「話す」ためには、ネタを考え、言葉を選び、表情や声のトーンを調整する必要があります。しかし「聞く」ためには、相手の方を向いて、うなずきながら「へえ」「なるほど」と相づちを打つだけでいいのです。
また、「聞く」ことで得られる情報量は膨大です。一人の人間が持っている知識や経験は無限大。その一部でも聞き出すことができれば、自分の知識として蓄積することができます。
さらに、「聞き上手」な人は周囲から好かれる傾向があります。人は自分の話を聞いてくれる人に対して好意を抱くものです。ビジネスの場でも、プライベートでも、「聞き上手」であることは大きなアドバンテージになります。
元コミュ障だからこそ説得力がある視点
著者のいしかわゆきさんは、自身を「元コミュ障」と称しています。学生時代は人と話すのが苦手で、飲み会では隣の席の人に「あなたの隣はつまらない」と言われたこともあったそうです。
そんな著者だからこそ、「会話が苦手な人」の気持ちがよくわかるのでしょう。「相手に興味を持ちましょう」と言われても、「それができたら苦労しない」という本音を理解しています。
著者が提案する「自分のために聞く」という考え方は、コミュニケーションが苦手な人にとって、大きな救いになるのではないでしょうか。「相手のため」ではなく「自分のため」に聞くことで、会話へのハードルが下がり、自然と会話が続くようになるのです。
また、著者は「インタビューライター」という仕事を通じて、「聞く」技術を磨いてきました。その経験から得た知見は、非常に実践的で説得力があります。「こうすれば会話が続く」「こうすれば相手は喜んで話してくれる」という具体的なテクニックが満載です。
まとめ
『聞く習慣』は、会話が苦手な人、人と話すのが緊張する人にとって、大きな救いとなる一冊です。「相手に興味を持てなくても大丈夫」「自分のために聞けばいい」という視点は、コミュニケーションの悩みを抱える多くの人の肩の荷を下ろしてくれるでしょう。
著者のいしかわゆきさんが提案する「聞く習慣」は、明日からすぐに実践できる具体的なテクニックばかりです。「つなぎ言葉」を使う、「知りたがり」になる、「聞きたいことメモ」を作るなど、どれも簡単に取り入れられるものばかりです。
「聞く」ことは、相手との関係を深めるだけでなく、自分自身の知識や視野を広げることにもつながります。「聞く習慣」を身につければ、人間関係が豊かになり、自分自身も成長することができるでしょう。
会話が苦手な人も、そうでない人も、「聞く」という視点から自分のコミュニケーションを見つめ直してみてはいかがでしょうか。きっと新しい発見があるはずです。



